お疲れ様です、たつまるです。
8月後半、甲子園を見ながらふと自分の高校時代を振り返っていました。
僕は野球部ではなかったですが高校3年の夏まで部活をして、当然勉強は間に合わず、一年浪人させてもらって
とある地方医大に入学しました。
あの頃は苦しいながらも、夢と希望、というか幻想に取り憑かれながら、勉強していたなと思います。
今回は無知ゆえに悩む方々を減らすため、昔の自分の抱いていた幻想を打ち砕くような形で、
これから医学部受験を考えている方(高校生や浪人生)に向けての記事にしたいと思います。
(たまに医療者にとっては煩わしい解説を入れていますがご容赦ください。)
全然いいことばっかりじゃないけど、それでも君は医者になりますか?
幻想1:医学部に受かれば、楽しい学生生活が待っている
現在受験勉強に励んでいる高校生、浪人生の皆さんとしては、今の苦しい勉強生活を乗り越えれば薔薇色のキャンパスライフが待っているとお考えではないでしょうか。
残念ながら、そうでもありません。
普通にしんどい大学生活
医学部に入学して6年間ストレートで卒業できる人は全体の65〜75%です。残りの約30%の学生は6年間のどこかでつまづき、留年あるいは放校になってしまっているのが実態です。 https://t.co/IwroRfMjmJ pic.twitter.com/olblmTVCBI
— iのある医学教育 (@iPadiryo) August 22, 2022
有名な図ですが、医学部の留年率はかなり高いです。
外野から見てると、留年するやつは怠けたやつ、みたいに見られそうですがそういうわけでもありません。
そもそも医学部受験を突破している時点で、世間から見ればかなり勤勉な方です。
そんな中でも留年してしまうタイプは
・一般学部の大学生並みに遊んでしまった人
・友達付き合いが苦手な、一匹狼くん
・教科書隅から隅まで読まないと気が済まない完璧主義者
めっちゃ怠けるまで行かなくても、こういった傾向のある方は医学部での留年リスクが高まります。
気をつけてください。
ちなみに、すごく華やかに過ごしておられる医大生をSNS上では散見しますが、あれはほんのごく一部、1%程度の事例と捉えてください。
残り99%は、テスト前にはヒーヒー言うてます。キラキラしてる人たちもCBT(多くは大学4年次に受ける全国医学部の共通試験)や卒業試験、マッチング(医者の就職活動)、国家試験前は人が変わったようにピリピリしています。
キラキラした大学生活に憧れる方は、医学部じゃなくて、東京の有名大学に言ってください。
余談ですが、高校の同級生が東京の有名な大学に進学し、同窓会で「AV女優と合コンした」「Fカップグラドルと実は付き合ってて、、」と聞いた時は、
血涙が出ました。
大学間の明確な差
一般企業就職の時には学閥と言うものがあるらしいですが、
医者の世界ももちろんあります。
白い巨塔で医局の争いなんかが騒がれていますが、医局の影響力は今もなおバチバチにあります。
医局内での出世における差別は徐々に少なくなってきているようですが、決して0ではありません。
例えば、医者は医学部を卒業して国家試験に合格すると、2年間の初期臨床研修を行います。(この時の段階は医師としてはまだ仮免許だ!なんて言われます。ちゃんと働いて給料ももらってますけどね)
この最初の2年間はいわゆる研修医というやつですね。
医者人生で最初に働く病院ですからね、みんな華々しいスタートを切りたい!とか福利厚生の良いところ!とか、有名なこの先生がいるところ!とか色々な思惑が交錯しまして、
人気病院というものが生まれてきます。そういう試験の採用の時も出身大学の影響があったり無かったり。
これを医学部に入ってから先輩に教えてもらって知るわけですよ
もう3年とかやったら引き返せへんがな!
まあ僕個人はそんなに意識高い人間じゃないんでどうでも良いですが、大志を抱く受験生には後悔してほしくないので伝えておきます。
ちなみにどのレベルから全国的に評価されるかというと、地方医大出身の自分からすると、
旧帝大以上、私立なら慈恵とか順天堂大学以上はやっぱりすごいな〜と思います。まあ要は自分が浪人時代に届かなかったところをすげーと思ってるだけなのでしょう。
ちなみに大学間のパワーバランスは、診療科によって全然違います。
A大学は〇〇外科は全国5本指に入るけど、□□外科は県内の病院も縮小気味、、
B大学は▲内科も、マイナー科も日本一!でもあの科は全然人おらん、、
というのは良くありますので、そういう意味でも大学間の差は様々です。
大学全体としての優劣もあるし、診療科としての優劣もあります。
全国どこの医学部に行っても、完璧に平等というわけではない
これだけ覚えておいてください。
幻想2:医者になればお金持ちになれる
医者は本当に金持ちか
医者になれば金持ちになれるんだと、無知な僕は働き出すまでそう信じていました。
なんなら研修医として薄給で働いている時も、専攻医(医者3年目〜5年目くらいを指す)になれば今の倍くらいになるって聞くし、と思ってました。
実際、給料は倍近くになりました。その代わり休日も働き、残業時間も4倍くらいになりほとんど家に帰っていません。それはただお金が欲しいから残業しているわけではなくて、責任と仕事量が増して、休日も時間外も働き続けないと仕事が終わらないからです。
時間を切り売りして、お金をもらっているに過ぎません。まあ労働者、雇われの身なんてそんなもんと言えば、そんなもんですが。
つまり、医者は金持ちか、という問いに対しては
比較的高単価で自分の人生が売れる
ということになります。これが金持ちに当てはまるかどうかは個々の判断に任せます。僕は違うと思いますが笑
医者はマネーリテラシーが低い
マネーリテラシーという言葉をご存知でしょうか。
ざっくり言えば、お金の知識とそれを活用する能力のことですが、医者はこれが異常に低いです。
医学部は非常に閉ざされた環境で、6年間医学ばっかり学びます。他の学部(法学部とか経済学部とか)との交流もありません。
よく総合大学の医学部(〇〇大学医学部)に進学すれば、他学部との交流も、、みたいな話が出ますが、基本的に嘘っぱちです。
途中の学年からキャンパスが別々になり、また時間の流れも違います。
一般学部の方は4年で就職、もしくは大学院試験なのに対して、医学部は6年、そして毎年のように留年がかかった試験があります。(大抵の医学部は単位さえ取ればOK、卒業できる!みたいな感じじゃなくて、各年次ごとにでかいテストがあり、毎年何人か留年していきます。)
物理的な距離と時間の流れの違いから、ガラパゴス化していき、医学しか勉強していないマネーリテラシーが欠如した高所得者が誕生していきます。
いまだに医者なりたての研修医に、ワンルームマンション投資の話がやってくるのはそのためです。
毎年全国で何人かはひっかかっているんでしょうね、、、
福利厚生、なにそれ
医者の世界に福利厚生という概念はありません。
医者の世界には、この記事の中の福利厚生はほとんど存在しないか、あっても微々たるものです。
具体的にいうと
勉強会・研修会:医師にも勉強会、セミナーなんかはあります。参加費は研修医の時は無料だったり、病院が負担してくれるところもありますが、3年目以降は結構払わされます。地方会・学会(珍しい症例や研究成果を発表する場)なんかも半ば強制的に参加・出席させられます。
もちろん休日です。仕事に関連して内容で、上司から発表しなさいと命令されて参加します。しかし残業代はもちろん出ません。自己研鑽:すなわち自分に自由意志で自らを磨くためにやっていること、という扱いです。
発表はその場でぱっとできるモノではない相応の時間をかけて準備をしますが、普段の業務時間はクソ忙しいので業務時間にはとても出来ません。もちろんこれも自己研鑽になります。
引っ越し台、住居費に関しても全然出ません。
医局の力というのは昔に比べて弱まったものの未だ健在で、今でも大多数の人間は医局に属して働くのですが、
人事異動があります。若い頃は経験を積むために、1〜2年くらいで転勤があります。短い先生は半年で転勤というのも聞きました。家賃補助が出るかは、その勤務先によってまちまちです。そして引っ越し代はもちろん出ません。ちなみにその人事も、1ヶ月前に言ってもらえたら早い方で、伺った最短記録は3日前でした。
来週から君は〇〇病院ね と言われるそうです。
一般企業の友人には頭おかしいと言われました。それくらい一般常識と乖離した業界ということです。
働き方未改革
2015年、電通新入社員が過労自殺され、その残業時間が世間でも取り上げられるようになりました。
月80時間の残業が過労死ラインとされる中で、自殺される直前は130時間に達していたようです。
この問題がきっかけとなったのか、働き方改革というものが推進されるようになり、原則として⽉45時間・年360時間の時間外労働に抑えるように、となっています。しかし専門職・医師は対象外となっています。(具体的には先送りみたいな措置になっていますが、適用される気配は微塵もありません)
もし働き方改革も進んでるし、医者の働き方もマシになってるやろうと期待している受験生がいたら、ここで断言しておきます。
君が医者になる頃でも、確実に今のままです。
働き方改革が取り上げられる中で医師になった僕ですが、変わったことは
医局のホワイトボードに「カンファレンス(会議や症例検討会のことを指します)は短くしよう!」という張り紙が貼られているだけで、就業時間前と後に長時間カンファレンスがあり、土曜とかにカンファレンスを短くするにはどうすればいいか。を考えるカンファレンスがあったり。
あと時間外労働も普通に100時間くらい当たり前です。
同じ病院の内科の先生方は、部長に80時間以内で申告するよう言われていました。
僕は、「うちは忙しいから無限に書いていい!」と豪語されていたのですが、普通に呼び出しなど多過ぎて働いた分だけ申告して150時間でした。そしたら80時間以上で書いてしまうと産業医面談になって働けなくなるからやめなさいと。
口だけでしたね笑
そしてその2ヶ月後に適応障害と鬱状態で働けなくなりました。当たってますね、予言だったんでしょうか。
そしてこの状況は全国の病院のほとんどで見られています。そんなことしてないよって病院があったら名乗り出てほしいくらいです。就職希望者が殺到しますよ。
そしてこれよりひどい条件はいくらでもあります。特に大学病院で勤務されている先生方はひどいことが多いです。大学からの給料は雀の涙、外勤バイトで生計を立てるしかないという方がほとんどです。
特に大学院生となると悲惨だそうです。
医師の出世王道ルートは医局人事に属し、専門医を取得する年次(医師6年目くらい)付近で、大学院に入学、博士号を取得して、行ける人は留学行って、論文書いて、教授や基幹病院(なんちゃら医療センターみたいな大きい病院)の部長、病院長へ。
という感じになるのですが、この大学院というのは学校なんで、当然学費がかかります。もちろん本人の負担です。じゃあこの期間、勉強だけに集中するのかというとそうではありません。生活費を稼がないといけませんから、労働もしないといけませんね。
じゃあ週1〜2回だけ単価の良いバイトだけで働いてとできるかというと、そうではなくて医局の仕事も普通に降って来ます。まあでも身分的には手伝ってくれてる学生さんなんで、ということで無給医の完成です。
僕自身はそのような問題が降りかかる年次の前に、王道出世ルートから外れています(これをドロップアウトと言います)ので、あくまで親しい先輩方からの叫びがソースとなります。気になった方は、SNSで医師 大学院生で調べてみましょう。闇が見えます。
上も変える気がない
ここでの上とは行政ではなく、直属の上司になってくる部長や指導医クラスの方々です。
この先生方は、我々世代よりもさらにブラックな労働環境を生き抜いてきた方々ですので、基本的に医師の能力を上げるためには、その働き方でも致し方ない・当然だ と考えている人が大半です。
この状況はいかんと実際に行動に移している先生には、まだお会いしたことがありません。聞いたこともありませんので、どうやら僕の住んでいる県にはいないようです。日本のどこかには居られるかもしれません。
もちろん医師の技術は一朝一夕に身につくものではありません。血反吐吐きながら努力してやっと手に入るモノでしょうし、それを怠って患者さんの治療にあたるのも大問題です。
一方で持続可能性には欠けており、内科医・外科医を志望する若手の数は減少傾向です。
人手が足りないから激務になる→ブラックな環境に耐えられる人しか残らない→結局根性論になる→若手が嫌がる→人手が足りなくなる
という負のループにハマっていく診療科・医局は今後も増加するでしょう。
外科学会の会長が外科専攻医の急減に悩まれていた提言出されてましたが、総会のデモビデオで家族団欒の際に呼び出されてた光景を美談として流してた時点でもう手遅れだと思います。
— ダヴィンチ (@HBa0999) August 10, 2022
まあこんな感じで、医者といえど世代の違いで、価値観にかなりのギャップが生じていることは言うまでもありません。
学会会長やらトップ層は皆さんの親御さんより年上ばかりと予想されます。
親世代の完成された(凝り固まった)価値観を覆せるでしょうか?僕はほぼ不可能と思っています。
なので今後も現場は変わりません。
ちなみに前述しました働き方改革の実行ですが、医療現場は先送りと申しておりました。
具体的には2024年かららしいです。それまでに各医局が行おうとしていることは、
医師ビーコントラッキングのhttps://t.co/hPbeGw7kRXさんの使用例でも、やはり医局は自己研鑽の場として認識されている…
— ぱいく (@paikuhan2011) April 30, 2022
みなさん!医局での学会準備、外来予習、オペ記事作成etc.は全て自己研鑽ですよ! pic.twitter.com/aHYvxJLm5n
病棟や外来診察室にいる時間以外は、全て自己研鑽とするというものでした。
担当患者さんの治療方針について医局でカンファレンスで議論することも、上から命じられた学会発表の資料作りも、明日の外来をスムーズの行うための予習も、全てあなたが勝手にやっていること、仕事じゃないよ!という扱いです。
いや、仕事やろ
これはショックバイタルで運ばれてきた患者さんに、原因検索の前にとりあえずABC確保するとか、そういうレベルでもなく、モニター外してバイタル確認しなくなったようなモノです。
都合の悪いものは見ない、無かった事にする。
研修医の時に「とりあえずの治療じゃなくて、ちゃんと原因考えながら動かんかい!大元をどうにかせんと意味ないやろ!」と怒ってくれた部長先生、息してますか〜?
もしこれから医者になられる方々は、
医者になったとしても無給で働かされることも多々あり、時給換算はコンビニの方が上であるという現実を覚悟した上で入ってきてください。
そして仮に、この現状を打破しようと取り組んでおられる素晴らしい病院・指導医に巡り会えた時は、何があってもそこを動かない方がいいです。多分他には見つかりません。
もし動かれる際はこっそり筆者にご一報ください。僕が受験しにいきます。
幻想3:モテる
医大生だからモテる時代は終わった
昔はそういうのあったらしいですけど、今はまあないです。
僕も医大に入学したらそれだけでモテるぞ。という甘美な勧誘に負けましたが、そんな甘い話はありませんでした。普通に男はかっこいい奴が多く、おしゃれな人も多かったです。
割合的には
かっこいい・話せる陽キャ:普通:チー牛=1:2:1 くらいでしょうか。
よくよく考えたら世間一般でもそんな割合な気がするので、特別医学部だから、かっこいい人の数が減るというわけでもなかったです。
そして、女子医大生はやはり男子医大生の相手を見つけることが多かったですが、相手にされるのは当然上位25%の方々ですからね。
じゃあ外に目を向けたらどうかというと、全然効果はありません。
人は見た目が9割とはよく言ったもので、こちらの身分を明かす前にすでに判断されています。
そして医大生と分かったとしても、所詮学生ですから、今はただの金のない芋となると全く相手にされません。
受験生の皆さん、合格したら外見も磨きましょう。
一応メンズ向けのおすすめのサイト貼っておきます。
医者になったらモテるのか
さて、晴れて医者として働き出せばお金も稼げるし、モテるんじゃないか?とお考えでしょうが、なかなか世の中は厳しいです。
まず、医療職以外の方との出会いが極端に少ないため、必然的に出会いはほとんど看護師さんばかりになります。昨今はマッチングアプリも流行しており、医療関係者以外の方とも会いやすくなっていますが、緊急呼び出しや休日出勤など、理解してもらえない勤務形態が多く、そのギャップから上手くいかないパターンもあるようです。
じゃあ看護師さんからモテまくるかというと、別にそういうわけでもありません。普通に仕事しているだけでは何も起こらないでしょう。
もしアドバイスするとすれば、気になる人がいるなら、しっかりと食事なり飲みなり誘いましょう。看護師さんは医者と同様、非常にストレスの溜まる仕事で出会いも少ない職業ですので、普段よほど変なことをしていない限りは軽い飲みくらいならOKしてくれます。
もし断られたら、普段の行いを見直しましょう。
もし何もアクションしなくてもあからさまに寄ってくる看護師さんがおられた場合は、あなたではなくて貴方の免許証がモテています。参考にしてください。
まあこれ出来る人は医者じゃなくてもモテると思うので、結局医者はモテるってのは幻想だと思います。
この辺の感覚がよくわからないってウブな方は、とりあえずこれだけ覚えて帰ってください。
女の”大丈夫”には気をつけろ
他はもう忘れていいです。
幻想4:やりがいのある職業
99%の理不尽と、1%のやりがい
約10年前の今日、高3の部活を引退して受験勉強に入った。コードブルーに憧れて、また交通事故にあった親を助けてくれた医者に憧れて医学部目指したけど、今なら言える。
— 流浪医たつまる (@tatsu5rurouni) August 22, 2022
「医者はやめとけ」
華やかでやりがいのある場面は1%もないし、ほか99%は辛い時間🥲
受験生の皆さん、参考にしてください
医者やめたいって思うことは1日1回はあるけど、やってて良かったって思ったことは1度もない。瞬間的にあったのかもしれんが、すぐ理不尽な出来事でかき消される。まだ経験浅いからと言われたらそれまでやけど、逆にリターンまで長過ぎん?
— 流浪医たつまる (@tatsu5rurouni) June 13, 2022
こんな考えが浮かんだ人、ドロップまであとちょっとですよ笑
例えば働き盛りのお父さんが交通事故で搬送、それをなんとか治療して一命を取り止めたり、
長年苦しんでいた難病を診断、治療が奏功したり、
といったやりがいのある場面があれば、医師だけでなく全ての医療者はアドレナリンドバドバで、時間も疲れも忘れて全力で治療に取り組むでしょう。
しかしこのようなケースはごくごく稀です。
普段の診療はもっと地味でやりがいは皆無です。
詳細はフィクションではありますが
・明らかに薬剤性腎障害が進行しているのに、説明してもロキソニンをやめない頑固爺(ロキソニンは良い鎮痛薬ですが、高齢者では漫然と内服を続けているケースが多く、副作用で腎機能障害が進みます)
・エアコンで冷えて、低体温になってしまう!と救急車を呼ぶ人(今月3回目)
・検査も診察もいらないが、睡眠薬・利尿薬は出せるだけ処方しろと恫喝してくるブランドものを携えた生活保護受給者
・入院しては看護師さんにセクハラを繰り返す○ス
といった方々に月1〜2回は遭遇しながら、他にも困ったクレームも多数受けながら診療にあたるわけです。
最近はコロナウイルス感染症の影響で、医療逼迫が深刻化し、一般の方々に受診や救急要請を控えるようお願いがありました。善良で理解ある方々はそれを受けて、行動をしてくださいますが、コロナ禍以前から
「なんでやねん」としか言えないような方々は一定数おり、医師には応召義務があるので、基本的には診察しないといけません。
こういう訳のわからん事例にいちいち呼び出され、睡眠時間も休日も削られ、というのを99回やって1回やりがいある場面が来るかどうか。1%はもはや多い方かもしれません。
そして前述の話と被りますが、その99%もお金になる訳じゃなくて、無給やったり減らされたりするんですよ。
どうですか、耐えられそうですか?
やりがい搾取、構造の問題
上記の問題の多くは、日本の医療構造上の問題でして、国民皆保険の限界とも言えます。
世界的に見て、日本の医療は「安い、上手い、速い」と吉野家みたいな奇跡の3拍子を揃えた唯一の国です。
それを支えているのは、僕らの先輩方の自己犠牲に他なりません。国民皆保険は弱者に優しい日本の誇りですし、それを支えた諸先輩方には敬意しかありません。
しかしその一方で、この状況は持続可能性は0です。このまま続けていけば、財政的には日本という国ごと沈没していき、医療現場としても医療の担い手の数は減少し、国というマクロ・医療現場というミクロ両方でみても、どっちも終わる定めなのです。
じゃあ何故上の方々は本腰を入れないのか。もちろんこれまでこれでやってきたとか医療の質を保つためとかあるでしょうが、要は自分ごとじゃないんです。今の指導医、部長世代(40〜50代)はあと20年働けば十分でしょうし、その頃はギリギリ団塊の世代が寿命を迎えていく頃と考えられます。(2042年時点で、団塊の世代は95~85歳)つまり逃げ切りが可能で、それがゆえにどこか他人事です。隙があれば自分の頃はとか話してきます。
この現状は、現在若手の医療従事者、そしてこれから医者になろうかと考えているあなたが直面する問題です。
まとめ
高校生、浪人生の身で、このような実状まで調べることは困難でしょうし、とはいえ知らずに来てはあまりに不憫です。
それでも医者を目指すぞ!という方はどうそ頑張ってください。確実にあなたの努力で救われる命があります。
ただ、高校で勉強ができるから、とか食いっぱぐれないぞと親や担任に勧められたと言った理由で、足を踏み入れるのは、美味しくない時代になっています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
自分は記事内で触れた王道ルートから逸れた、ドロップアウトした医師です。なんでそんなことになるのか紹介しています。