泥っぽして,専門性を極めるという道は絶たれたわけですが,あんまり悲観はしておりません.
好きなYouTuberの本なんですが、希少性や市場価値を出すのは掛け算「会社員✖️筋トレ✖️YouTuber」みたいな。
— 流浪医たつまる (@tatsu5rurouni) May 25, 2022
でも医者って、どれか一つの専門性を突き抜けようみたいな風潮強いですよね😭
泥医は掛け算で頑張ります👍https://t.co/kYhO8gHRUP
このツイートでも述べましたが,希少性や市場価値は「掛け算」なんだそうです.
自分にある人より少し優れた,もしくは個性的な部分を掛け合わせると,突出した希少性につながるのだとか.
泥医の僕ができる掛け算できる因子は「ドロップ」「若手で訪問診療」「町医者」くらいなもんです.
どうしようと考えてたら,敬愛する医クラ 訪問利確 先生のツイートを拝見しました.
医者って基本的には自分がいくら稼いだからいくら貰えるみたいな「歩合制」ではなく、この時間ここにいてくださいみたいな「時給制」で給料が発生する。
— 訪問利確 (@rikaku_watanabe) May 26, 2022
ただし、そこに営業力がありこの人がいると売上があがると経営者が思った時に、インセンティブが発生する。医者で営業力があると最強なのだ。
利確先生が最強って言うたら最強ですから、
とりあえず「訪問診療」✖️「営業力」とか
「町医者」✖️「営業力」で頑張ろうと思い、全然関係ないような営業職の勉強を始めました。
会話形式の本でしたので、僕はaudibleで訪問診療の道中や通勤中に運転しながら聴いていたのですが、
みるみる引き込まれる会話術、コミュニケーションの本質的な部分に終始圧倒されました。
今回は特に興味深く、臨床の場面でもすぐに使えそうな点をピックアップしていきます。
嫌いな医者から逆算する;人間力
本書では営業に必要な”人間力”という章で、嫌いな人の条件を書き出してみて、それの反対になる。
という方法が紹介されています。
具体的に医者Verで考えてみました。
嫌いな医者の条件を書き出してみる
- 挙動不審である
- せかせかしている
- 不潔である
- 否定してくる
- 怒っている
- 気分の浮き沈みが激しい
こんなところでしょうか。そしてこれの逆を考えてみましょう。
- 落ち着いている
- ゆったりしている
- 清潔感がある
- 肯定する
- 怒らない
- テンションが一定である
これが僕個人の目指すべき医師像というわけです。我ながら程遠いなあと実感します。
ということはこれを徹底できれば、理想の医者に近づけるわけですから、やらない手はないですね。
もし良ければ皆さんもやってみてください。
次は会話(というか診察)に関してです。
3分がなんとか我慢して聞ける限界点
カップラーメンを作る3分を待つ時間は大変長く感じますよね。
待つ方は待たさせる方の3倍時間だと知っておいてください。
話す方はたった3分でも、聞く方は10分近く黙って行儀よくしていないといけないように感じるのです。
営業の魔法 この魔法を手にしたものは必ず成功する 中村信仁 著
3分で伝える
患者さんからしたら、こちらの話を聞く時間は、カップラーメンを待つ長い時間に該当します。
誰もが、人の話を聞くのは3分が限界なのだそうです。普段馴染みのない医療情報の話なら尚更でしょう。
医師はカンファレンスで簡潔に話すように指導されたりしますが、患者さん向けに簡潔に話すというのは訓練せずに現場を過ごすのではないでしょうか。
訪問診療の患者さんは、社会的にも医学的にもプロブレムリストが多いことが大半です。
それら全てに言及しつつ、簡潔に話すのはほぼ無理ゲーかと思います。これをしようとすると、ばーーーっとしゃべって情報過多になり、全く理解してもらえません。
多くの問題点のうちの、最重要な10%程度の情報を、3分で伝える。
これを心がけて話すようにすると、コミュニケーションはうまく回り出したように感じています。
yes but 話法
一般的には「はい、、、しかし、、」という流れで、一旦相手の意見を肯定し、その後に「しかしこういうのはどうでしょう?」とこちらの意見を述べる方法です。ただ、本書での解説は違います。
相手に「but」を言わせる
具体的な会話について説明します。
このコロナ禍になってのあるあるかもしれませんが、クリニックの発熱外来を受診しながらPCR検査は希望しない、という患者さんとの会話です。
(上気道症状が多く出揃っていることを確認した上で、)
医「症状からはコロナの疑いもありますが、PCR検査は希望されないと伺いました。」
患「別に接触とかないし、コロナだとは思いません。別の検査をしてください。早く職場復帰したいので」
医「承知しました。別の血液検査などももちろん可能です。ところで本日受診されることは職場には連絡されていますか?」
患「はい、症状があるので医療機関を受診するように言われました。」
医「なるほど。職場では市販の抗原キットを使ったりなどもされるんですか?」
患「そうですね、使ってる人もいましたね。営業担当なんかは特に。私は関係ないですけど。」
医「それだけ意識の高い職場ですと、PCR検査の結果は求められたりしませんか?」
患「言われるかもしれないですね」
このような形で質問を投げかけつつ、こちらの意図する方に誘導する方法になります。
正直、僕自身も本書を読む前までは、めちゃくちゃ忙しい外来の中で発熱外来もしてたので、
「(発熱外来来といてPCRせんてどういうつもりやねん!)」とイライラしちゃったり、
「こちらはPCR無しでは否定できません。」といきなり結論ぶつけたりが多かったんですが、結局ごちゃごちゃ言われて時間取られるんですよね。
すごーくまわり道に感じますが、質問に答えてもらって思考のプロセスを経ることで、同じ結論に至った方が、結果的に早く済みます。
結果的にButになっている
という点を意識するのがいいと思います。
まとめ
そもそも営業力を医者に掛け合わせるってどうしようと考えつつ、興味本位で読みましたが、
仕事や案件、契約をとってくるとか言ったものではなく、単純にコミュニケーション能力を磨く上で必読書だと感じました。
まだまだ完全ではありませんが、徐々に外来でのコミュニケーションも円滑になりつつあるのを感じていますので、これから外来が増えてくる若手の先生や、開業される先生方におすすめです。
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Audibleではこの本もなかなか良かったです。簡潔に話すって本当に大事ですよね。
訪問診療にいった若手って少ないと思います。
若手の目線ですが、これから訪問診療始めようかなと考えておられる先生には知ってもらいたい内容ですね。