お疲れ様です、たつまるです。
当ブログの目標は、
【ドロップアウトしても何とか生きていけるよ】
ということを、心身ともに限界を迎えるような職場で奮闘しておられる専攻医、専門医、指導医の先生方に知っていただく
ことです。
とはいえ、私自身の経験談だけでは心許ないという方も多いと思います。
そこで様々なキャリアの先生方に、体験談を募らせていただき、これからご紹介していきます。
ドロップアウトまで行かずとも、転職するだけでも何かと憚られる狭い医療業界なので、
そもそも「現在の職場環境を変える」という選択肢がなかなか思いつかない方が多いと思います。
これから数名の体験談をご紹介しますので、少しでも読者の方々のお役に立てれば幸いです。
Dr.ポメ先生の体験談
今回最初にご紹介するのはDrポメ先生の体験談です。以下は先生の語りとしてお読みください。
専攻医〜転職まで
元々の専攻科を選ぶに至った経緯、思い
自分は医師家系ではなく、もともと目指している診療科はなかったのですが、なんとなく開業医になることは夢を見ていました。開業医になってたくさんお金を稼ぎたいという不純な気持ちが昔からありました(笑)
そういう気持ちもありつつ研修医になり、研修医時代に小児科の先生にすごくお世話になったので、未来のある子供たちを助けることができる小児科も考えました。
しかし、小児科はかなりハイパーだろうし少子化の時代に開業は厳しいんじゃないかと思ってマイナー科の選択を考えました。
内科に関してはJ-OSLERが大変だということが話題になっており、ハイポ志向の自分には無理だと考えて諦めました。
またマイナー科は手術があり、学生のころからあまり手術が好きではなかった自分でしたが、まぁ専門医取得までであれば、気合いで乗り切れると思っていました(笑)
上記の理由のため、科の選択に関して特に深い思いはないです(笑)
ましてや論文をたくさん残して大学内で偉くなりたいなんて微塵も思っていませんでした。
その専攻科を選んで思い知った悩み、辛かったこと
自分が辞める原因とも重なるのですが、最も自分にとって悩んだことは
住んでいる地域での開業医がかなり溢れかえっており、新規で開業することが厳しい
とわかったことです。周りの同期などは親が開業医である人がけっこうおり、継ぐだけでよいのですごくうらやましく(内心はずるいなと)思っていました。
専攻医として働きながら、
「このまま働いて専門医とって医局の人事異動に従って転勤する日々を送ってしまうのは嫌だなー」
という気持ちはずっとありました。
あとはマイナー科の中でも手術が多い科であり、長い手術などはけっこうしんどかったです。
手術に関してなのですが、はっきりいってあまり向上心はありませんでした。
手術がすごく楽しいかといわれたらそうではなく正直苦痛であることの方が多かったです。若手の専攻医でもできる手術をやらせてもらって、少しずつできるようになるのはたしかに達成感がありましたが、将来的に関連病院などで手術をたくさんやってみたいと思う気持ちは出てきませんでした。
ただ専門医をとらないと開業医になる選択肢もなくなってしまうし、せっかくその診療科を選んだのだからとりあえず頑張らないといけないとは思い、なんとかやっていました。
転科、転職の経緯
医局人事で毎年転勤するので、その都度いろいろあったのですが、最終的にやめるに至ったのは、転勤先での上司や医局長とのトラブルが原因でした。
もちろん自分が悪いところも多く(自分ではそれなりにやっているつもりでしたが、手術に対する向上心がないことも態度には出ていたようです、、、)、すごく反省はした部分はあり頑張って挽回していこうという気持ちがあったのですが、そのさなかに医局長から自分だけ悪い待遇となる話をされて、そこで自分の中でプツンと糸が切れました。
子供がいる自分は家族を養っていかないといけない立場でもあるのに、待遇が悪くなる(特に金銭面)ことはほんとに辛く許しがたいもので、
このまま医局にいても助けてくれないし、ただただ言いなりになっていくだけだと感じました。
もう少しで専門医取得もみえていたのですが、専門医を取ってしまうとせっかく取ったのだからもう少し医局にいなきゃいけないと思い込んでしまう自分が想像できたので、
あえて専門医を取得する前にやめて、新たな道に進むのもありだと考えました。
たつまる先生などSNSでも医局をやめて働いている先生方の情報があり、そういう情報があったので自分もそっちの道にいってみようと考えて踏み切ることができました。SNSで医局をやめていった先生方の情報がなかったら我慢して医局にいたと思います。
転職活動〜現在
医局を辞める
やめると決意してから怒涛の日々でした。ドキドキしながらもすぐに転職会社を何種類か登録しました。これまでも時々メールでくる転職情報で訪問診療の求人をみていて、待遇もよくこれからもニーズが高まっていくことは間違いないと思っていたので、医局に関係なくこれから挑戦するなら訪問診療になるだろうとは思っていました。
やめると決意した日に家に帰って妻に
「ごめん、病院でこういうことあって、俺もうやめるわ。もう転職会社登録した。もうほんとにやめる。周りの目とか正直気になるけどもうそんなのいいからやめる。」
といったのをはっきりと覚えています。妻は理解してくれて納得してくれました。
転職会社に登録するとすぐに連絡がきて、何社からも同じような内容の求人がきて対応が面倒であったので、こんなに登録しなければよかったと思いました(笑)みなさんも登録しすぎには注意した方がいいです。だいたい似たような求人を提示してくるので2,3社でいいのかもしれません。
結局使った転職会社は一番先に電話連絡をしてくれたところにしました。エージェントさんはすごく丁寧で真摯に対応してくれました。訪問診療の世界のことはわからないので、ある程度指導体制の整っているところでお願いしました。
そして転職活動のために休むためにどうすればいいのか自分で調べて、メンタルの不調が理由だと休みやすく、念のため診断書をもらうべきと書いてあったので、その日にメンタルクリニックを予約して抑うつ状態と診断書を書いてもらいました。
すぐに医局に「メンタル的にきついので休ませてください」とお願いをしたところ、すんなりとまずは休みなといってくれたので診断書は見せずに済みました。
また友人からのアドバイスで医局と話をするときはボイスレコーダーをつけたほうがいいといわれていたのでしっかり録音しました。
無事に休みはもらえましたが、医局内で「あいつメンタルきつくて休んでるらしいよ」みたいな噂がすぐに広まると思うととてもつらかったです。実際は別に僕のことなんか周りはたいして気にしていないのだと思いますが、自分自身は周りの目を気にするもんですよね。
でも今になっていえるのは間違いなく周りの人は思ってるより他人がどうなろうが気にしてないってことです。多分1,2日は気になって話題になっているのかもしれませんがすぐに忘れるものです。みなさん自分の仕事に忙しいから他人のことなんて気にしていません(笑)
僕も転職活動の間は何度も自分に「自分は人とは違う道をいくことになるけど、それでいいんだ。医局をやめることになってドロップアウトして逃げたんだなとか周りに思われるかもしれないけどいいんだ」「周りの人は思ってるより自分のことを気にしていない、だから新しい道に進もう、医師免許があれば大丈夫」といろいろ言い聞かせていました。
医局をやめるというのは自分の人生にとってかなりの一大イベントになりますので、自分に自信をかける言葉、自分を肯定する言葉を何度も心の中で言っていたと思います。
休職中は転職会社との面談、スポットアルバイト検索をしていました。また平日休みなので家族と子育て支援センターにも行っていました。父親はその中で僕一人でした(笑)
でも子供と遊ぶ時間ができていい期間であったと思います。
スポットアルバイトに関しては、コロナワクチン接種のアルバイトが豊富にある時期であったのでひたすらワクチンアルバイトをしていました。
転職エージェントのありがたさ
エージェントさんから訪問診療の求人で一覧表をもらい、気になった2つのクリニックと面談を行いました。どちらもすばらしく僕のことを歓迎するといってくれのはよかったです。
別に僕の経歴に関してとやかく言われることはなかったです。
一緒に頑張っていきたい、サポートしていきますと言われて嬉しかったです。最終的には給与が高く通勤しやすい方を選びました。
契約に関してもエージェントさんがすべてやってくれるのでほんとに助かりました。エージェントは手数料をたっぷりもらっていることに関して賛否両論あると思いますが、面談の同席や契約書関係などほんとにお世話になったのですごく感謝しています。
この間も医局の秘書さんとはメールでやり取りをして、もう医局をやめる方向で考えていることは教授の耳に入っている状態でした。
その後無事勤務先が決まり、最後に教授へ挨拶に行きました。
ほんとはもうやめるのだから会わないで終わらせたい気持ちもありました。それは教授と合わせる顔がないという気持ちであったり、悔しさ・恥ずかしさなどいろんな感情があったから、もうこのまま消え去りたいと思っていたのだと思います。
でも最後ここで話して筋を通した方がその後の人生で悔いが残らないだろうなと思い、なんとか教授に挨拶に行きました。
このときも忘れずにボイスレコーダーを起動しております。教授は少し残念がられていましたが引き止められることはなく、これからも頑張るように言ってくださいました。他の先生方には会いたくなかったので急いで帰りました(笑)
この日が終わったときの開放感はほんとにすごかったです(笑)もう医局とはおさらばだーー!やったーー!と叫んでいたと思います(笑)
転科、転職の結果、良かったこと悪かったこと
訪問診療は24時間365日体制でありますが、新しい勤務先は非常勤の先生に平日夜間と土日の対応を任せているため、常勤医は平日夜間と土日は完全にフリーです。夜中にピッチがなることを気にせずに眠れるのはほんとに素晴らしいです。こんな当たり前のことができない世界にいたんだなとつくづく感じました。
当然給与も増えており、金銭的なゆとりも増えました。訪問診療では急変などで入院加療が必要になる患者さんが多いので総合病院の先生にはいつもお世話になっており、頭が上がりません。
訪問診療は各々の医師がどれくらい稼いでいるかをクリニック側は把握しているのでしっかりこの給与に見合うだけ働こうと日々頑張っています。
また訪問診療はコミュニケーションスキルがかなり重要であり、訪問先の施設、患者、家族にとっていかに配慮できるかがとても大切です。コミュニケーションをとることが好きな自分にとっては向いている診療科だと思っており、充実した日々を過ごせています。あと手術をしなくなってしばらく経過していますが、今のところまた病院に戻って手術したいかというと全くそんな気持ちは出てきません(笑)
やはり手術は好きではなかったのだと思っています。
転職をしてみて、悪かったこととしては医局をやめてしまった負い目をやはり感じてしまうことです。周りは総合病院に勤めて急性期の疾患などをバリバリ診療し、専門医取得をしているのを聞いていると劣等感もどうしても感じてしまいます。自分はドロップアウトした身分なんだなと感じてはいます。
しかし自分も訪問診療の世界で今後は在宅専門医であったり、緩和ケア領域での知識をつけるなどして自分の強みをつけていくことは可能であり、この道でも活躍は十分できると思っています。
研修医の後輩にアドバイス
診療科選びはすごく悩むと思いますし、様々な人との出会いで考え方も変わっていくと思います。
僕は選んだ診療科でうまくいかずに診療科変更となってしまいました。自分はその診療科に向いていなかった運命だったのだと今では割り切れています。最近は医師の過労に関しても話題になっている影響なのか、診療科変更したことについて見下してくるような人は周りにいません。
むしろうらやましがられることが多いくらいです。やはり周りの先生方も現状に不満を感じているのだと感じました。でも医局をやめる決定的な理由がなく、とりあえず続けている先生が多い印象です。もちろんそれで続けていくのは素晴らしいと思いますし、そのように働いている先生を尊敬しています。
これから専攻医になっていく先生に伝えたいことは、今後選んだ診療科を何かしらの原因でやめることになったとしても
他に活躍する場所はある
ということです。医局に対する恩恵や周りからの目などいろいろ気になるところはあると思いますが、思っているより周りはほんとに他人のことを気にしていません。
なのでまずは選んだ診療科で頑張っていきながら、もしうまくいかないことがあったときは別の道に進んでも問題ないと思って働いていければメンタル的にも働きやすいと思います。
僕はほんとに訪問診療という新たな道に入り、充実した日々を送れているので、あのとき医局をやめて本当によかったと思っています。自分が活躍できる場所をみつけることができたと感じる毎日なのでとても幸せに生活できています。家族との時間も増えているため家族関係もすごく良好です。
みなさんの今後の進路の参考になれば幸いです。
まとめ
今回はDrポメ先生に転職された経緯をご執筆いただきました。
同じような境遇で悩んでいる先生も多数いらっしゃると思いますので、ぜひ一つの参考にしていただけますと幸いです。
今後も体験談シリーズは続きますので、お楽しみに!
こんな記事も書いてます
うまくいけば、バイト先から高待遇で勧誘されることも?
その件は私のnoteで記載しております。