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総合診療からスポーツドクターもありかも;「スポーツ医学ってなんだ?」 世良 泰 著 中外医学社

某外科の専門医制度をドロップアウトし、クリニックで総合診療及び訪問診療に携わっている僕ですが、
正直このままこの感じで行くのは気乗りしていません。別に内科は好きでもなんでもなかったので診断学には非常に苦しんでおります。

学生時代を考えると、元々スポーツが好きなのでスポーツドクターもありだなと思っていた時期がありました。

しかし病院実習を経て、整形外科の手術ってなんだかな〜と思って敬遠しておりました。

スポーツドクターって整形外科専門医の後のサブスペと聞いていたので、道は閉ざされてると感じていたのですが、「スポーツ医学ってなんだ?」 世良 泰 著 中外医学社 を読んで、意外と総合診療からもいけるんじゃない?という考えに至りました。

結論としては、総合診療は一応続けつつ、スポーツドクターの勉強もしていこうという気になってきました。

そこで、この記事では、特に参考になった点を3ポイントピックアップしてご紹介します。

  1. スポーツドクターとしての進路を検討されている先生
  2. 将来はスポーツ関係もありかもという若手医師・医学生
  3. 整形外科以外の先生

当てはまる方はおすすめです!

概要

【概要】
著者:世良 泰
出版社:中外医学社
出版年月日:2022/4/20
ページ数:227ページ

著者の世良先生の略歴です。

  • 慶應義塾大学医学部卒業
  • 市中病院で内科も整形外科も診療している(整形外科専門医、日本内科学会認定内科医)

すごいですね〜ダブルボーダーです。

後述する(本書内でも解説されている)スポーツドクターとしての専門医は全てお持ちです。

本書で得た新たな知見は大きく3つ

運動処方という概念

スポーツドクターの専門医

整形外科でなくても目指していい

以下で解説していきます。

運動処方という概念

運動療法のエビデンス

身体活動量23METs・時 / 週で死亡率が0.61倍になる

「スポーツ医学ってなんだ?」 世良 泰 著 中外医学社

元文献 (Arem H, Moore SC, Patel A, et al. Leisure Time Physical Activity and Mortality: A Detailed Pooled Analysis of the Dose-Response Relationship. JAMA Intern Med. 2015; 175: 959-67.)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4451435/

運動がなんとなく体に良いことは皆さん周知の事実ですが、どれくらい良いのか、またどれくらいの強度の運動が良いのかは、具体的には全く知りませんでした。

上記の研究を受けて、健康日本21の中の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)2013」において、18〜64歳では「23METs・時 / 週」の身体活動が推奨されています。

運動メニュー

具体的には

  1. 早歩きを毎日一時間を週に6日→22.8 METs・時 / 週
  2. バスケットボールを1回2時間 週に2回→ 24 METs・時 / 週
  3. 高強度のウェイトトレーニングを1回90分 週3回→ 27 METs・時 / 週

みたいな感じです。

意外だったのは有酸素運動だけでなく、ウェイトトレーニングや体操・ゴルフなどもOKという点です。

体操(自宅で軽・中等度)、ゴルフ(カートを使って、待ち時間を除く場合)はどちらも3.5 METs の身体活動になり、体操を1日30分 毎日行えば 12.25 METs・時 / 週に相当しますので、他の身体活動で補いやすくなります。

ゴルフでは1ラウンド4時間として、週1回で14METs・時 / 週 になりますし、もしクラブを自分で運ぶ場合は18METs・時 / 週になります。結構な身体活動になってる気がしますがいかかでしょうか。

運動処方の流れ

Exercise is Medicine.

American College of Sports Medicine : 全米スポーツ医学会

運動処方に至る流れも本書では優しく解説されています。

処方前にはヘルスチェック(既往歴・喫煙歴・家族歴・内服薬や身長体重、血圧や血液検査、心電図など)を行い、運動処方に至ります。

内容は種目・強度・頻度・持続時間の決定です。

普通の内服薬でも、事前に患者のヘルスチェックはしてますし、処方としても、どの薬をどれくらいの量で、どれくらいの頻度で内服してもらうのか、決めてますもんね。

まさに

Exercise is Medicine.

だと思います。

スポーツドクターの専門医

ぶっちゃけ整形外科のサブスペしかないと思ってたのですが、日本では主に4種類あるようです。

  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 日本パラスポーツ協会公認障がい者スポーツ医
  • 日本整形外科学会認定スポーツ医

これに加え、国際オリンピック委員会(IOC)が行っている IOC Diploma in Sports Medcine というのも紹介されています。そして世良先生は全部持ってはります、えぐいです。

全てざっと調べたので以下で解説します。

日本スポーツ協会公認スポーツドクター

医者5年目から受けられます。

合計52時間分の講習を受けると取れますが、講習を受けるためには日本スポーツ協会もしくは公認の加盟団体からの推薦が必要なようです。自分の住んでる都道府県の体育協会や、各競技団体からの推薦状をもらう形になりそうです。

どうやったら推薦状がもらえるかは完全に謎です。県予選のスポーツドクターとか応募したら良いんですかね笑笑

費用は教材費、登録量(4年間)込みで97200円でした。なかなかですね。

一応リンクを貼っておきます。

https://www.japan-sports.or.jp/coach/tabid217.html

日本医師会認定健康スポーツ医

医師免許持ってたら受けられます。

名前のように、ガチアスリートに帯同するような感じではなくて、日々の生活習慣やまさに運動処方を行うイメージです。

健康スポーツ医学講習会というものを受講するようです。

令和4年はまだ発表されてませんが、令和3年は11月に行われてるようですので、秋頃と睨んでいます。

費用は前期後期どちらも18000円(日本医師会会員なら12000円)とのことです。

それを受けた後に申請、登録(登録料5年で10000円)があるので、合計46000円ですかね。

日本パラスポーツ協会公認障がい者スポーツ医

日本整形外科学会認定スポーツ医

パラスポーツはまた今後考えます、一応6年目から受けられるそうです。

整形外科学会認定スポーツ医は、整形専門医に行く気がないので割愛します。

IOC Diploma in Sports Medcine

これはハンパないです。

英語でのレポート提出や試験、海外での実習もあるようです。

英語力皆無の僕にはかなりハードル高いですね、、、

これ読むのにまあまあ時間いるくらい英語力ないです

そしてお値段もすごい!

2022年5月時点では

1 GBP = 160.83 円

講座代だけで約870000円! まじで桁が違いますね。

これに渡航費用とか合わせると、果たしてどれくらいになるのか想像もつきません。

そしてこれだけの費用を取り返せるほど、日本にスポーツドクターとしての需要があるのかどうかは疑問です。まあお金には替えられない価値はあるのでしょう、個人的には非常に興味があります。

整形外科でなくても目指していい!

整形外科からスポーツドクターを目指す医師が圧倒的に多いため、内科や産婦人科、精神科を専門としてスポーツドクターを目指すのも、ブルーオーシャンかもしれません。

「スポーツ医学ってなんだ?」 世良 泰 著 中外医学社

本書を通して感じたのは、今まで考えていたスポーツドクターのイメージ(日本代表選手やクラブチームの帯同など)は、氷山の一角であったということです。

スポーツ外傷を診る能力も当然必要ですが、内科的な視点、精神科的な視点も求められます。

またアスリートではなく、一般の方に広く運動を取り入れてもらうことも、スポーツ医学なんだと感じました。それならばむしろ内科的な考え方がメインとなるように感じます。

今の自分の職場では、総合診療科として生活習慣病の管理から、近所の学生の捻挫や骨折など何でも診ている状況なので、スポーツドクターを目指す上で案外悪くないかもなと感じてきました。

最近整形外科では、これらにめっちゃお世話になってます。

まとめ

整形外科以外からもスポーツドクターとしての道は切り開けそうです。

とりあえず僕は総合診療しつつ、目指して見ようと思いました。

総合診療する上で、避けては通れないジャンル・おすすめ参考書について書いてます。

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